Springターム

Springタームはコア科目は2科目+FYPとなります。

1.Managing Organization (教授:Stacy Blake-Beard

毎授業ケースに基づきながら、組織内のアラインメントが戦略の実行において以下に大切か、ダイバーシティが組織にどのような影響をもたらすのか等を学習します。基本的に、毎回のケースをコングルーエンスモデルと呼ばれるフレームワークを用いて分析していきます。FallタームのManaging Peopleが個人やチームをどのようにリードしていくべきかを議論するのに対して、本授業は組織をテーマにしており、WinterタームのLeadership Development Programとも併せて、一年を通じて、各人のリーダーシップを開発していきます。

 

2.Operations Management (教授:Joseph Hall

 

Winterターム

Winterタームからは選択科目の履修も始まるため、コア科目は2科目となります。

1.Corporate Finance (教授:Felipe Severino

コーポレートファイナンスの授業はAccountingやCapital Marketsで学習した事項を用いながら、バリュエーションを中心に学びます。FCFの算出方法に始まり、APVやDCFモデルによる企業価値算定手法を学んでいきます。理論を学ぶことはもちろんですが、様々なケースを通じて、用いるべき資本コストはなんなのか、その算出根拠はどう考えるのか等、学習した事項の運用方法を身につけていくことができます。Capital Marketで分かったつもりになっていたβですが、あれ・・・結局βって何だっけ・・・?と考えさせられました。選択科目でも沢山のファイナンスの授業がありますが、それらの基礎となる重要な科目です。

 

2.Global Economics for Managers (教授:Emily J Blanchard

マクロ経済学の授業です。リカードの比較優位の原理に基づいて貿易の効果について考えるところから始まり、財政政策や金融政策がマクロ経済にどのような影響を及ぼすのか、そしてそれらが最終的に企業の判断にどのような影響をもたらすのかを学習します。ケースにおいては、東西ドイツ統合における財政政策・金融政策や、COVID-19によるサプライ&デマンドショックについてといったタイムリーなトピックも用いながら、思考のフレームワークを身につけて行きます。

個社の技術や戦略といった事項はもちろんですが、マクロ経済がビジネスの成否に与える影響の大きさも相当なものなので、本授業を通じて、マクロの視点を身につけ、経営判断に寄与させていくスキルを習得することができます。

Fall Bターム

1.ストラテジー (教授:Ramon Lecuona
基本的には、ポーターのファイブフォース(Tuckではそこに独自に1つComplementorを加えたシックスフォース)を中心とし、それぞれの価値を生み出す源泉として、規模の経済性、ラーニングカーブ、シナジー、取引費用理論、破壊的イノベーション等の基礎的な事項を学びました。コア科目だけあって、古典的なケースが多く、トヨタによるプリウスの開発、任天堂・セガ・ソニーによるゲーム機戦争、デジタル技術の導入におけるコダックの失敗と富士フイルムの隆盛等、日本企業の名前が沢山出てきます。

ケースの舞台となる時代は、日本の国内市場で地盤を固めた日本企業が、満を持して米国市場を攻めてきたというものが多く、そうした日本企業に米国企業がどのように対応したか、日本企業がいかにうまくやっているかを見ていくこととなりました。Ducatiの元CEOがゲストスピーカーとして登壇した際に、「技術の向上や製造プロセスの改善といった既存の延長線上では絶対に日本のメーカーには勝てない。ただし、デザインの先進性等、Inovativeな部分では勝つことができる。」と仰っていたのは、なんだか複雑な気持ちで聞くことになりました。

私はストラテジーについては、過去に独学でそれなりに勉強していたので、知識としての新たな学びはあまりありませんでしたが、ケーススタディを通じて、何度もその知識を応用したことで、モノの見方が多少変わったように感じています。ポーターのファイブフォースの要素を5つ言えることと、それを実際に使って考えられることとは当然ながら別次元の話です。

 

2.マーケティング (教授:Sharmistha Sikdar
市場調査の方法、分析手法、セグメンテーション、ターゲッティング、ポジショニング、3C、4Pのフレームワーク等、マーケティングの基礎事項を網羅的に学習。実践面では、様々な企業のCMを見ながら、学習した事項を使ってどういったコンセプトで作られたものかを考察したり、与えられたデータを元に、特定の商品(キリンビール等)のポジショニングを考えたりもします。

また、Markstratというソフトウェアを用いて、各スタディグループ毎に、マーケティングのシミュレーションゲームをしたりもしました。顧客ニーズや競合動向を分析しながら、新商品開発や既存の商品の価格戦略、製造計画、チャネル戦略等を考えます。各意思決定に基づいて市場シェアや売上・利益が算出され、それらを反映した株価が最終的に一番高いチームが優勝です。うちのチームはリスクを取って新商品開発に一番早く乗り出したところ、最初はR&Dコストが嵩み、最下位にまで転落しましたが、見事新商品をヒットさせ、優勝することができました。

教授が非常に淡々と授業を進めるため、授業としては正直イマイチだと感じましたが、テスト勉強をしながらスライドを読み返していくと、各フレームワークが実例と共に良く纏まったいい資料だなと思いました。内容もさることながら、教える側の熱量がとっても大事だなと感じます。

 

3.Capital Market(教授:Ing Chen
学習内容としては、株式・債券・オプション・フューチャーの基礎的な項目を網羅します。学習する内容の深さとしては、CFAのレベル1や日本の証券アナリスト試験(受けたことないので不確かですが。)と同じぐらいのレベルかと思います。また、金融機関で市場系の業務に従事している人にとっては簡単すぎる内容かもしれません。

例えば、DCF、DDM、CAPM、デュレーション、プットコールパリティといった用語を聞いて内容がピンと来る人はExemption(受講免除)してしまっても構わないのではないでしょうか。私もExemptionを検討しましたが、前期に会計をExemptionしていたこともあり、受講することにしました。私は個人的にExemption推進派ですが、限られた時間をどのように使っていくかは、よくよく検討が必要なところです。

本授業については、毎回問題演習が課されることや、Ing教授の説明の上手さもあって、知識を定着させられたり、理解がかなり深まったりしたので、結果として受講してよかったかなと思います。

バックグラウンド次第では、ちんぷんかんぷんになっている人もそれなりにいたようですが、Capital Marketは最悪、でもIng教授は最高という人も結構います。

また、統計で学習した事項と関連してくることもあったりして、面白かったです。簡単な回帰分析を実際に行うことで、「あぁ、CAPMのβってこういうことか」と腹落ちしたりもしました。

 

4.Analytics II (James SmithPrasad Vana
本授業は前半でエクセルのモデリング、後半はデータビジュアライゼーションとRを用いた分析手法を学習しました。

エクセルのモデリングにおいては、様々なケースを読み解きながら、どのように美しく、機能的にモデル化していくか、また、作成したモデルを基にSolverというエクセルのアドイン機能を用いながら、どのように最適な意思決定を下していくかを学習していきます。

データビジュアライゼーションではTableauを使って様々なデータを図表に纏める手法を学びました。Rを使った授業では、基本的なコーディングの理解を深めつつ、回帰分析、クラスター分析、ニューラルネットワークによる分析といった分析手法の基礎を学ぶことが出来ました。

こういったハードスキルが身につくのは、成長がわかりやすくていいなと思いつつ、実際にどこまで業務に活かせるものか、やや不透明です。こうした分析手法が必要な業務に従事したとしても、会社によって使っているソフトウェアも違ったりするでしょうし、そもそも授業で使っているような綺麗なバックデータが実務で手に入ることも稀なのではないでしょうか。

他方で、それぞれの分析の概念的な部分や、出てきた結果の読み解き方についてはこれからの時代必須スキルかと思いますし、上記のCapital MarketのCAPMのように、他の科目で統計の知識が必要となるケースも多く、今後の勉強や実務において自身の土台となる重要な科目であったと思います。大学院で勉強していく上でも、論文のコンテンツの相当な部分が統計手法による実証研究に割かれているケースも多く、やはり知ってくべきだと思います。