Winterターム

Winterタームからは選択科目の履修も始まるため、コア科目は2科目となります。

1.Corporate Finance (教授:Felipe Severino

コーポレートファイナンスの授業はAccountingやCapital Marketsで学習した事項を用いながら、バリュエーションを中心に学びます。FCFの算出方法に始まり、APVやDCFモデルによる企業価値算定手法を学んでいきます。理論を学ぶことはもちろんですが、様々なケースを通じて、用いるべき資本コストはなんなのか、その算出根拠はどう考えるのか等、学習した事項の運用方法を身につけていくことができます。Capital Marketで分かったつもりになっていたβですが、あれ・・・結局βって何だっけ・・・?と考えさせられました。選択科目でも沢山のファイナンスの授業がありますが、それらの基礎となる重要な科目です。

 

2.Global Economics for Managers (教授:Emily J Blanchard

マクロ経済学の授業です。リカードの比較優位の原理に基づいて貿易の効果について考えるところから始まり、財政政策や金融政策がマクロ経済にどのような影響を及ぼすのか、そしてそれらが最終的に企業の判断にどのような影響をもたらすのかを学習します。ケースにおいては、東西ドイツ統合における財政政策・金融政策や、COVID-19によるサプライ&デマンドショックについてといったタイムリーなトピックも用いながら、思考のフレームワークを身につけて行きます。

個社の技術や戦略といった事項はもちろんですが、マクロ経済がビジネスの成否に与える影響の大きさも相当なものなので、本授業を通じて、マクロの視点を身につけ、経営判断に寄与させていくスキルを習得することができます。

ゼネラルマネジメントプログラム

MBAプログラムには、各校様々な特色があり、ファイナンススクール、マーケティングスクール等特徴を表わす様々な呼び名があります。Tuckはゼネラルマネジメントスクールと言われており、何かに特化した人材よりも、幅広い知識を身につけ、バランス感覚に優れた、いつの世にも通じるリーダーの輩出を目指しています。

カリキュラムの特徴として、卓越したコア科目の運営が挙げられます。1年目はコア科目として、ストラテジー・統計・ファイナンス・経済学等々、経営者として必要となる知識を一通り学びます。

ケースとレクチャーを交えたクオリティの高い講義であることはもちろんのこと、各科目を関連付け、「ストラテジーの観点ではこうだが、同じ事象を経済学の観点から捉えるとこうも解釈できる」といった様な視点の交錯を演出しています。

これを実現するのは、教授間の連携が非常によいこと、学生が皆同じコア科目をとっていることから教授達も学生が何を学んでいるか共通認識をもっていること等が挙げられます。

コア科目を履修することで、Tuckの卒業生としてのクオリティが担保され、また、複雑なビジネス環境で活躍するために物事を多面的に見る視点を身につけることができます。

コアカリキュラムの関連付けについては、Tuckの公式サイトでも紹介されています。また、過去に在校生ブログでも綴られていますのでご参照ください。

 

First Year Project

FYP(Frst Year Project)は、TuckのSpring Term(3~5月)に行われる必修授業。クライアントの現実の経営課題に対してコンサルティングを行うもので、MBA1年目の総仕上げ的な位置づけです。

学生5人1チームに指導教官として教授が1名つき、大小・業種も様々なクライアントの経営課題を解決します。アメリカの企業に限らず、世界各地の企業からプロジェクトの募集がある他、起業志望の学生自身が作り上げたビジネスプランを同級生と実現していくことも可能です。

以下は、在校生が過去に取り組んだプロジェクトの体験談です。

(1)プロジェクトの質が高い

クライアントは売上高が兆円規模のグローバル企業。そして、今回のプロジェクトの内容が、会社にとって非常に関心の高いテーマ。片手間で、ちょっと学生に考えさせてみようか・・・という温度感ではありませんでした。実際に、20名近くの社員にインタビューをさせてもらいましたし、中間・最終プレゼンには15~20名程度の社員が出席してくれました。TuckのFYP事務局の不断の努力と過去の実績のおかげで、質の高いプロジェクトが引っ張ってこれるのだと思います。

(2)Faculty Advisorが常にプレッシャーをかけてくる

週に1度45分、Faculty Advisor(FA: 担当教授)とのミーティングがあります。私のチームのFAはManagement CommunicationのJulieでしたが、プロジェクト全体の進捗が刈り取られることは勿論、「あなたは今週何をやったの?あなたのタスクの進捗はどうなの?(他の人のスライドについて)あなたはこのスライドをどう変えるべきだと思う?」などと、コールドコールが連発されるため、適度な緊張感を維持できます。そして必修科目なので、メンバーが途中でドロップアウトすることもないし、全メンバー真剣にならざるを得ないっていうのもいいですね。

(3)チームワークの学び

FYPは学生5人1組で取り組みます。そして、全ての授業の中で、チームで過ごした時間は、このFYPが一番長かったです。そんなチームワークの中で、リーダーがやる気ありすぎて他のメンバーに対してパワハラ気味になってきたぞとか、メンバーの一人が母国に帰って時差のせいで全然捕まらないとか、マイペース過ぎて全然期日通りに動いてくれないメンバーにリマインドしまくるとか、十分なコンセンサスなしにリサーチやったら全然役に立たなかったとか、膨大な情報量をくれるメンバーがいるけど膨大過ぎて全然消化しきれねーぞとか、就活と同時並行中のメンバーにはどう気を遣おうとか、色々な経験ができます。その中で、このやり方はうまく行ったな、この人のコレは真似しよう、あの人のアレは真似しないようにしようとか、気付きがあります。

(4)情報検索スキルを学べる

クライアントに応用できる先行事例を探すために、図書館(Feldberg Library)のスタッフにケースや記事の検索リソース、上手な検索ワードの使い方等、色々と教えてもらいました。またチームメンバー同士でも、有益なポータルサイトを相互に教え合い、実際にそれらを使っていく中で、情報検索スキルを学べました。プロジェクトを通じて強く感じたのが、ピッタリくる先行事例を探すという作業自体が一番大変だったこと。普段の授業では、ケースを読むことすら面倒くせーなと思ったりもしていましたが、読むべきケースを与えてもらえることって贅沢甚だしいなと反省しました。

(5)コミュニケーション

チームの中の役割分担では、Client Engagement Managerというポジションに名乗り出てみました。私は海外経験が全くない(仕事で英語に触れた時間も、8年累計で2時間くらいだと思います笑)ので、正直英語のビジネスメールの挨拶すらよくわからず、1通メール打つのにもプレッシャーを感じていました。が、FYPの中で、クライアント、教授、卒業生など50人くらいにコンタクトを取り、30人くらいに実際にインタビューし、その過程で数百通のメールを五月雨式にやり取りする中で、基礎的なビジネススキルを学び、また必要以上に気を遣わずにコミュニケーションを取る度胸は身に付けることができたと思います。私同様海外経験がない方にはこのポジションはおススメです。

(6)ハードスキル

クライアントの業界、プロジェクトに関連する知識、ロジカルシンキング、プレゼンテーションスキルは当然鍛えられます。守秘義務のため詳しくは触れられません、悪しからず。

前述のとおりFAからのプレッシャーは強く、毎日のようにインタビューもやっていたので、FYPはかなりストレスフルでしたし、FYPがなければもっと楽だったな、という風にも思っていました。実際Spring Term(3~5月)の労力の半分以上はFYPに割かれました。でも同時に充実感はずっと感じていましたし、他の科目では学べないことをFYPが補完してくれているように思いました。

もちろん他のMBAでもクラブ活動等を通じてコンサルの機会は数多くあると思いますが、オフィシャルな必修科目であるからこそ、質の高いプロジェクトに、全メンバー強い責任感を維持しながら取り組めるのだと思います。3つも4つも中途半端に取り組むより、質の高い1つに真剣に取り組む方が学びがある。なので、FYPは良いプログラムであるというのが、私の結論です。