Fall Bターム

1.ストラテジー (教授:Ramon Lecuona
基本的には、ポーターのファイブフォース(Tuckではそこに独自に1つComplementorを加えたシックスフォース)を中心とし、それぞれの価値を生み出す源泉として、規模の経済性、ラーニングカーブ、シナジー、取引費用理論、破壊的イノベーション等の基礎的な事項を学びました。コア科目だけあって、古典的なケースが多く、トヨタによるプリウスの開発、任天堂・セガ・ソニーによるゲーム機戦争、デジタル技術の導入におけるコダックの失敗と富士フイルムの隆盛等、日本企業の名前が沢山出てきます。

ケースの舞台となる時代は、日本の国内市場で地盤を固めた日本企業が、満を持して米国市場を攻めてきたというものが多く、そうした日本企業に米国企業がどのように対応したか、日本企業がいかにうまくやっているかを見ていくこととなりました。Ducatiの元CEOがゲストスピーカーとして登壇した際に、「技術の向上や製造プロセスの改善といった既存の延長線上では絶対に日本のメーカーには勝てない。ただし、デザインの先進性等、Inovativeな部分では勝つことができる。」と仰っていたのは、なんだか複雑な気持ちで聞くことになりました。

私はストラテジーについては、過去に独学でそれなりに勉強していたので、知識としての新たな学びはあまりありませんでしたが、ケーススタディを通じて、何度もその知識を応用したことで、モノの見方が多少変わったように感じています。ポーターのファイブフォースの要素を5つ言えることと、それを実際に使って考えられることとは当然ながら別次元の話です。

 

2.マーケティング (教授:Sharmistha Sikdar
市場調査の方法、分析手法、セグメンテーション、ターゲッティング、ポジショニング、3C、4Pのフレームワーク等、マーケティングの基礎事項を網羅的に学習。実践面では、様々な企業のCMを見ながら、学習した事項を使ってどういったコンセプトで作られたものかを考察したり、与えられたデータを元に、特定の商品(キリンビール等)のポジショニングを考えたりもします。

また、Markstratというソフトウェアを用いて、各スタディグループ毎に、マーケティングのシミュレーションゲームをしたりもしました。顧客ニーズや競合動向を分析しながら、新商品開発や既存の商品の価格戦略、製造計画、チャネル戦略等を考えます。各意思決定に基づいて市場シェアや売上・利益が算出され、それらを反映した株価が最終的に一番高いチームが優勝です。うちのチームはリスクを取って新商品開発に一番早く乗り出したところ、最初はR&Dコストが嵩み、最下位にまで転落しましたが、見事新商品をヒットさせ、優勝することができました。

教授が非常に淡々と授業を進めるため、授業としては正直イマイチだと感じましたが、テスト勉強をしながらスライドを読み返していくと、各フレームワークが実例と共に良く纏まったいい資料だなと思いました。内容もさることながら、教える側の熱量がとっても大事だなと感じます。

 

3.Capital Market(教授:Ing Chen
学習内容としては、株式・債券・オプション・フューチャーの基礎的な項目を網羅します。学習する内容の深さとしては、CFAのレベル1や日本の証券アナリスト試験(受けたことないので不確かですが。)と同じぐらいのレベルかと思います。また、金融機関で市場系の業務に従事している人にとっては簡単すぎる内容かもしれません。

例えば、DCF、DDM、CAPM、デュレーション、プットコールパリティといった用語を聞いて内容がピンと来る人はExemption(受講免除)してしまっても構わないのではないでしょうか。私もExemptionを検討しましたが、前期に会計をExemptionしていたこともあり、受講することにしました。私は個人的にExemption推進派ですが、限られた時間をどのように使っていくかは、よくよく検討が必要なところです。

本授業については、毎回問題演習が課されることや、Ing教授の説明の上手さもあって、知識を定着させられたり、理解がかなり深まったりしたので、結果として受講してよかったかなと思います。

バックグラウンド次第では、ちんぷんかんぷんになっている人もそれなりにいたようですが、Capital Marketは最悪、でもIng教授は最高という人も結構います。

また、統計で学習した事項と関連してくることもあったりして、面白かったです。簡単な回帰分析を実際に行うことで、「あぁ、CAPMのβってこういうことか」と腹落ちしたりもしました。

 

4.Analytics II (James SmithPrasad Vana
本授業は前半でエクセルのモデリング、後半はデータビジュアライゼーションとRを用いた分析手法を学習しました。

エクセルのモデリングにおいては、様々なケースを読み解きながら、どのように美しく、機能的にモデル化していくか、また、作成したモデルを基にSolverというエクセルのアドイン機能を用いながら、どのように最適な意思決定を下していくかを学習していきます。

データビジュアライゼーションではTableauを使って様々なデータを図表に纏める手法を学びました。Rを使った授業では、基本的なコーディングの理解を深めつつ、回帰分析、クラスター分析、ニューラルネットワークによる分析といった分析手法の基礎を学ぶことが出来ました。

こういったハードスキルが身につくのは、成長がわかりやすくていいなと思いつつ、実際にどこまで業務に活かせるものか、やや不透明です。こうした分析手法が必要な業務に従事したとしても、会社によって使っているソフトウェアも違ったりするでしょうし、そもそも授業で使っているような綺麗なバックデータが実務で手に入ることも稀なのではないでしょうか。

他方で、それぞれの分析の概念的な部分や、出てきた結果の読み解き方についてはこれからの時代必須スキルかと思いますし、上記のCapital MarketのCAPMのように、他の科目で統計の知識が必要となるケースも多く、今後の勉強や実務において自身の土台となる重要な科目であったと思います。大学院で勉強していく上でも、論文のコンテンツの相当な部分が統計手法による実証研究に割かれているケースも多く、やはり知ってくべきだと思います。

 

Fall Aターム

1.Manegirial Economics(ミクロ経済)(教授:Teresa Fort)

Fort教授によるミクロ経済学の授業。完全競争市場における短期均衡・長期均衡という基礎的事項に始まり、完全競争ではない市場において企業がどのように行動するのかを主にはプライシング手法を通じて学んでいきます。授業はケースが多く、アルミニウム市場、海運市場や漁師等々の様々な立場に立って、市場を経済学の観点から分析し、どのように将来を見通し、行動を起こしていくのかを考えていくことができました。個人的に、経済学って理論としては面白いけど、実際のビジネスにどうやって使うんだよ・・・と思っていたので、ケースを通じて実際のビジネスの場での応用力を身につけられたことは良かったかと思います。また、教授の教え方は、市場をどのように分析していくかという思考のフレームワークに重点を置いていたので、産業構造の捉え方を身につける上でも面白い授業でした。月曜朝一にも関わらず、教授の熱量が凄かった・・・

2.Analytics I (統計分析I)

統計分析の基礎となる授業。Fall BにはAnalytics IIが待ち構えており、統計という分野がコア科目においても以下に重視されているかが分かります。Dicision Treeの作り方に始まり、それに基づいたリスク分析の手法・意思決定の仕方を学び、後半はSPSSというアプリケーションを用いて回帰分析の手法について学んでいきます。経済学もですが授業の進むスピードが速く、毎回の課題をこなしていくのに必死でしたが、一応、回帰分析の仕方・読み解き方・各分析手法における問題点等を学ぶことができました。すごく沢山のことを学んだ気がしますが、まだこれで「I」なの?って感じです。統計の授業もケースが多く、ビジネスシーンからDecision Treeを作り上げていくことは、実際のビジネスの場で意思決定する際の頭の整理をする力を養うことに繋がったかなと感じます。

3.Managin People (人材管理)(教授:Daniel Feiler

人材管理(モチベーション、行動科学、倫理、ネゴシエーション等)について学びました。Feiler教授は40歳以下の教授Top40にも選ばれたことのある教授で、授業へのエンゲージメントが半端ない教授でした。人材管理を教えているだけあり、生徒のモチベーション高め方や自分自身の魅せ方等、相当考えているイメージです。毎回、実験的に何らかのアクティビティに取り組んだ上で、そこに潜むバイアスを示しながら、それらにどのように向き合っていくかを学んでいきます。この毎回のアクティビティで見事にみんなバイアスにハマっていくのが面白かったです。どんなに優れた人でも必ずバイアスには囚われるのだということを知った上で、リーダーを目指していくことが大切だと思います。

4.Managing Communication (コミュニケーション)

所謂スピーチやプレゼンの授業。スピーチの質を高めるための理論や技法、効果的な資料の作り方を学ぶことが出来、ある意味一番実践で使える授業だったかもしれません。コンサルタントをしておられる方には当たり前のことかも知れませんが、Think-cell(資料作成サポートのアドイン?)最高すぎだろ・・・と感じました。Tuckは色んなアドイン機能を提供してくれるので、自分はさておき、PCのスペックばかりがどんどん強化されていきます。教授は元コンサルタントの方も多く、自分のテイストとは違った資料の作り方をマスター出来たほか、毎回の授業でスピーチやプレゼンをし、それを録画したものを自分で見て感想を提出することになるので、なかなか心を削られました。クラス全員からフィードバックも貰えるので、自分自身を改めて客観的に見る良い機会となりました。

5.Accounting (会計)

本当の基礎から3表連動モデルまで教えてくれる授業です。流れとしては、財務3表それぞれの役割の外観・仕分けの基礎→損益計算書→貸借対照表→キャッシュフロー計算書→3表連動モデル→いくつかの会計科目の詳細(社債・売掛金・買掛金・在庫等)という順序で授業が進んでいきます。授業は教授お手製のPDFがテキストとして使用され、毎回の授業の前はビデオで基礎的なコンセプトを学びます(ビデオがすごくわかりやすい)。毎回の授業の予習復習に加えて、毎週金曜日に宿題を提出する必要があり、負荷は少し高めでした。特徴としては、何といっても教授のStockenが面白くて授業もわかりやすく、人柄が素晴らしいことです。この授業は全てZoomで行われましたが、何とか学生とインタラクションしたいStockenは、授業が始まる15分くらい前からZoomに入り、学生が入ってくるたびに声をかけて短い会話をしていました。アカデミックの部分の特徴としては、どの分野を学んでいるときでも3表の連動及びキャッシュの動き(Cash is king)を意識するように教授が強調していたことです。細かなルールを暗記させる授業というよりも、将来企業の幹部になるであろうTuck生に、3表の仕組みを理解させ、3表が意味するところを解釈させることに力点が置かれていたように思います。授業の最後に教授が「会計のルールを用いれば、投資家をだますこともできる。それくらい会計のルールというのは柔軟にできてしまっている。だからこそ君たちはリーダーとして会計を正しく使ってほしい」とメッセージをくれたのが印象的でした。

リクルーティング

Tuckの卒業生の主な進路として、3~4割がコンサルティング業界、2~3割が投資銀行やその他金融、2割がテック業界となっています。

就職活動においては、キャリアセンターが書類や面接の対策、企業とのコミュニケーション等で手厚くサポートしてくれます。(キャリアセンターのウェブサイトはこちら

キャリア関連のクラブ活動も盛んで、コンサルティングクラブ・ファイナンスクラブ・テクノロジークラブ等沢山の種類があり、2年生の指導の下、学生間で模擬面接を行ったり、企業の講演会やネットワーキングイベント等が催されます。

また、特に米国においてはネットワーキングも重要視される為、Tuckの卒業生ネットワークは大変心強い味方となります。

日本人の就職先としても、McKinsey・BCG・Bainといったコンサルティングファームや、Amazon・Ei Lilly、日系商社・金融等、活躍の場は多岐に渡ります。また、アルムナイの中にはご自身で起業されている方も多くいます。